たかぼんのAI小説&イラスト

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はじまりはいつも君と story5 「希望の解明」

咲良と陸は、安全を考えて都市部を避け、田舎道を選んで進むことにした。最初はコンクリートで固められた道を歩いていたが、その道は次第に砂利道へと変わり始めた。足元で砂利がジャリジャリと音を立てる。

周囲の風景は、都市の喧騒とは一変して静寂に包まれていた。生い茂る木々が道の両側に立ち並び、その枝葉は厚く、日光を遮断していた。まだ昼間のはずなのに、木々のトンネルの中はまるで薄暗い夕暮れ時のようだった。風が木の葉を揺らし、その音がひんやりとした空気に響いていた。

「陸~ちょっと待ってよ~。休憩しようよ~。」咲良は疲れた様子で、ぐんぐんと前を歩いて進んでいく陸に訴える。

「運動不足なんじゃねえか?」陸は咲良の方を振り返り、ため息をつきながら言った。

「いやいや、私がダメなんじゃなくて、陸が凄すぎるんだって!」咲良もまた、ため息をつきながら言った。

陸は、自衛隊特殊部隊の両親を持ち、学園内ではもちろんトップの運動能力、全国でも10位以内に入るほどの運動能力の持ち主なのだ。加えて機械学が得意で電子工学分野では、全国に名を響かせているほどの秀才なのである。

「わかった。もう少し進むと湖がある。そこで休憩にしよう。」

「うん!わかった!」咲良は元気を取り戻して、ぐんぐんと歩いていく。陸を追い抜かし、胸を張って歩いていく。

「おいおい…さっきのは疲れた様子は演技だったのか?」陸は咲良を見て唖然としていた。

しかし咲良を見る陸の表情はなぜか楽しそうだ。

咲良と陸は、休憩をとるために湖の近くまでやってきた。二人はその美しい景色に一瞬見とれた。澄んだ湖面は静かで、周囲の山々や木々を完璧に映し出していた。

「よし、ここで休憩にしよう」と陸が提案すると、「賛成!」と元気な声で咲良が応じた。さっきまでの疲れた様子はなんだったのか…

湖の水面には、時折小さな波紋が広がり、風がそっと触れるたびにキラキラと光を反射していた。咲良は手を湖の水の中に差し入れ、その冷たさを感じていた。そして、その光景に癒されるように、足を伸ばしてリラックスしていた。

「ねぇねぇ、お弁当にしようよ!ピクニックみたいじゃん!」咲良は後ろで荷物の整理をしている陸に声をかける。

「お弁当なんてないぞ?」

「え~さっき、カバンに缶詰とかいっぱい入れてたじゃん!」

「よく見てたな…」陸は諦めたように、カバンから缶詰を取り出す。

「なにがいいんだ?パイナップル?焼き鳥?ウナギのかば焼き?」

「え?!ウナギのかば焼きなんてあるの?」

「ああ、いろいろあるぞ。他にはカレーやビーフシチューなんてのもあるぞ」

「ウナギのかば焼きにしようよ。元気がでそうじゃん!」

「わかったよ…でも咲良はいつも元気じゃねーか?」陸は、ウナギのかば焼きの缶詰を開けながら呟いた。

「そうでもないんだよ…私だって、落ち込む時ぐらいあるんだよ…」咲良は湖の中に裸足になった素足を入れて動かし、ピチャピチャと音を立てている。

「そうなのか?」

「そうだよ!陸はもしかして、私を能天気なただの馬鹿だと思ってるんでしょう?」咲良は陸を睨みつける。

「私だって…こんなことが起きて、たくさんの人が死んでしまって…不安でいっぱいなんだから…」咲良は独り言のように呟いた。

「そうだよな…」

「でも私たちは生きてる。エレクトラも生きてるし、私たちは生き続けなければいけない。どんな状況であろうと…」

「そのとおりだ」陸は頷く。

「だから私だって、元気でいなくちゃって…」咲良はそう言うと、膝の間に顔を埋めて泣いた。陸はそっと咲良の横に座った。

陸は咲良が落ち着くまで、しばらくそうしていた。

そして「咲良、ウナギのかば焼きだ、食べなよ」と陸がそっとそれを差し出すと、

「いい匂い!」咲良はガバっと顔を上げて、ウナギのかば焼きを受け取った。

「美味しそ~陸も一緒に食べようっ」咲良の目には、まだ涙が残っていた。

「ああ」陸は返事をして、自分の缶詰を開けて食べた。

目の前に広がる湖は、木々の間から柔らかな日差しが差し込み、湖面に反射し、黄金色の輝きを放っていた。

二人は、時間が止まったかのように、現実の喧騒から解き放たれた。

鳥のさえずりや風に揺れる木々の音が、まるで二人だけに奏でられる音楽のように響いていた。

「さて行こうか。」陸が立ち上がって、咲良にそっと手を伸ばす。

咲良はその手を取り、立ち上がった。

突然、その時だった。

不気味な獣の唸り声が木々の奥から響いてきた。腹の底から絞り出されるようなその声に、空気が一気に張り詰めた。

唸り声は次第に数を増し、やがて周囲を取り囲むように響き渡る。薄暗い森の中で、音の反響が方向感覚を狂わせた。木々の影が揺れ、まるで何かが動き回っているかのようだった。咲良の心臓は早鐘のように打ち、その音が耳元で響いているかのように感じた。

「やばい、囲まれているな。」陸は冷静に状況を分析し、ナイフを取り出した。逆手に持ち直し、彼は身構えた。

「咲良、俺の後ろにいて。絶対に離れるな。」と陸が低い声で命じた。その声には普段とは違う緊張感と覚悟が滲んでいた。

咲良は恐怖に震えながらも、陸の背後に回り込んだ。唸り声はますます近づき、木々の間にちらりと見える影が増えてきた。何かがこちらに向かって突進してくるのがわかる。

「え?!」咲良が驚きの声を漏らした瞬間だった。彼女の腰に掛けてあったポシェットが突如、青白く輝きだした。その光は暗闇を切り裂くように放射された。そして、次の瞬間、稲妻のような放電が迸った。

さくらん、大丈夫だよ

また、咲良の頭の中に声が響いた。

エレクトラ!」咲良の声が響く中、放電の矢はまるで生き物のように猛然と獣たちに向かって突き進んだ。青白い閃光が森の闇を裂き、獣の唸り声をかき消していく。その矢は次々と襲い来る獣を正確に捉え、電撃が走るたびに獣たちは悲鳴をあげて地面に崩れ落ちた。

稲妻の光が一閃するたびに、獣たちは次々と串刺しにされ、光の中で痙攣する姿が浮かび上がった。

「すごい…」陸も驚きの表情を浮かべていた。

放電の閃光が次第に収まり、静寂が戻ると、獣たちは皆地面に倒れていた。咲良のポシェットは再び静かになり、エレクトラの光も消え去った。咲良と陸は周囲を見渡し、生き延びたことに安堵の表情を浮かべた。

「ありがとう、エレクトラ」と咲良がポシェットに向かって優しく囁いた。

森に静寂が戻ったかと思ったが、次は人の声が聞こえた。陸は再び身構えたが、現れたのは、一人の老人だった。

その老人の髪は白髪混じりの短髪で、やや無造作に整えられている。優しい茶色の瞳をしており、細身で背が高く、厚手の眼鏡をかけていた。その瞳には穏やかな光が宿り、見るだけで心が和むようだった。彼の全体から漂う落ち着いた雰囲気と、優しい笑顔が自然と安心感を与えていた。

「大丈夫ですか?」老人は心配そうな表情で声をかけてきた。その声には温かみがあり、まるで長い間会っていなかった家族に再会したかのような親しみが感じられた。

陸はその様子に安堵し、安全だと判断して、構えを解き、ナイフを収めた。

「森を散策していた時に野犬たちに襲われる君たちを見かけて駆け付けたんだが、さっきの光は何だったのかな?そしてこれは君たちがやったことなのかな?」老人は周囲に倒れている野犬たちを見て言った。

「いえ、これは私の大事な家族のエレクトラが助けてくれたんです。」咲良はポシェットの中身を見せて、誇らしげに言った。

老人はポシェットの中を覗き込む。「クラゲですか?」

「はい、電気クラゲのエレクトラっていいます」咲良が答える。

「こんなことが…」老人は驚きの表情でエレクトラを見つめている。

「私は生物学の研究をしている鈴木和夫と言います。この先に私の研究所がありますので、そちらで少しお話をしませんか?」

 

陸は咲良を見て言った。「どうする?」

咲良は少し考えた様子だったが、「生物学の研究所でしたら、エレクトラが休めるような大きな水槽とかありますか?」

「もちろん、ありますよ。」鈴木は笑顔で答えた。

「陸、行こう!エレクトラもずっと狭い所で我慢してるから。広い水槽で休ませてあげたいの」

「わかった。それでは鈴木さん、よろしくお願いします。」

陸と咲良は彼に案内されて、森の少し奥に入り込んだ場所に建てられている研究所に向かった。

その研究所はコンクリートで作られた3階建ての建物だった。大きさは一棟のアパートぐらいの大きさだった。

中には、水槽が多く並べられており、多種多様な生き物が飼育されていた。

「私は水生生物が専門でしてね。」鈴木は、興味深そうに水槽を見つめる咲良に声をかけた。

「さあこちらです。広い水槽でエレクトラくんを休ませてあげましょう。」鈴木はそう言うと、空の水槽に水を入れ始めた。

「この水は海洋水ですから大丈夫ですよ。」

水槽に海水が満たされるのを待って、咲良はエレクトラをポシェットから水槽へそっと移した。

「狭い所で長い間ごめんね。」咲良はエレクトラに話しかけた。

エレクトラはそれに答えるように少し発光すると、優雅に水槽の中を漂っていた。

「それでは、お二人様はこちらのソファに座ってください。飲み物を用意するので少しお待ちください。」

鈴木は奥の部屋へと向かった。

陸と咲良がソファに並んで座ると、しばらくして白髪の老人が透明のガラスコップにお茶を入れて戻ってきた。飲み物を陸と咲良の前に置くと、彼は陸と咲良の向かい側のソファに座った。

「こんなに若い人が生き残ってくれて、本当に嬉しい。」彼は陸と咲良を交互に見つめながら言った。

「あの時もエレクトラが助けてくれたんです」咲良が答えると、

「そうでしたか」と彼は言い、エレクトラが泳いでいる水槽の方に目を移した。

「私はあの時、この研究所で一人で研究をしていたんです。空を彩る光が見えた時、咄嗟に電磁波、おそらく重力波と呼ぶほうが正確なのかもしれませんが、大気に影響が出ることが分かったので、すぐに酸素ボンベを使ったのです。ここにはそういう機材はそろっていますからね。

恐ろしいことが起きました。あの後、街の方にも行ってみましたが、たくさんの人が亡くなっていた。警察も消防も自衛隊でさえ動いていない。

生き残っている人もいましたが、凶暴化していた。人類は滅んでしまったのだと思いました。私一人の力ではどうすることもできず、とりあえずこの研究所に戻ろうとしていた際に、君たちに出会ったというわけです。」

陸は白髪の老人の話に続けて話し始めた。

「自分たちは、先程話したようにエレクトラの力によってあの時を生き延びました。その後、普段では使われない周波数で呼びかける咲良の母親の声を聞いたのです。」陸は咲良に視線を移した。

そして次に咲良が話を繋げる。

「そう!そして今、私の母親に会いに行こうとしているんです!

私の母親は、宇宙科学の研究をしている泉真央と言います。お母さんなら今のこの状況を理解していて、どうしたらいいのか知っているはずなんです!」

「え?!」白髪の老人は驚いた声を出した。

「もしかして泉真央さんの娘さんですか?」

「私のお母さんを知ってるんですか?」咲良は訊いた。

「ええ、知っています。私はこれでも大学の教授を務めていまして、その同じ大学で宇宙科学の教授をしていたのが泉真央さんです。とても優秀な方で、私も研究や論文で切磋琢磨していた時がありました。

そうですね。泉真央教授ならば、この状況を把握されていることでしょう。」

咲良は自分の母親を褒めてもらってとても嬉しそうだ。

「そして、何より訊きたいのがエレクトラくんのことです。職業柄とても興味がありまして」鈴木教授は咲良の視線をしっかりと捉えた。その好奇心に満ちた視線は全く年齢を感じさせないものだった。

「えっと…どんなことでしょう?」咲良は力強い鈴木教授の視線に圧倒されながら言った。

エレクトラくんはあなたの言葉を理解しているのですか?」

「えっと…時々お話ししてくれます」

「なんと…」鈴木教授は驚きの表情だ。

「それは音声としてですか?」

「いえ、違います。頭の中に声が響いてくる感じです」

「なるほど…では先程、野犬を退けた電撃を命じたのは咲良さんですか?」

「いえ、違います。エレクトラが助けてくれたんです。」

「なんと…」鈴木教授はまた驚きの表情を浮かべたが、すぐに真剣な表情に戻った。

そして、独り言のように、エレクトラの能力についてブツブツと考え始めた。

「電気クラゲが知能を持っている…脳を持たないクラゲのどこに知能回路が存在するんだ…いや…一時的に電気の力で脳のニューロン回路を形成することができれば…理論上は可能だが…」

「えっと…鈴木教授?」咲良がブツブツと独り言を言って、自分の世界に沈み込んでいく老人を現実に戻そうと声をかける。

「おおっと、すまんね。ついつい…いやしかし、これはすごい発見かもしれないよ。まずはエレクトラくんが咲良さんとコミュニケーションが取れているということは、エレクトラくんに知性があるということなんだ。その知性はきっと、電気の力で一時的に形成されているものだと推定できる。たぶん、咲良さんの身に危険が迫った時などに形成されるんだと思います。

電気の力で敵を退けることは決して珍しいことではありません。

電気ウナギなども、巨大なワニなどをその力で撃退することもあるのですから。」

「うちのエレクトラはすごいんです!エッヘン」咲良は胸を張って誇らしげだ。

水槽の中のエレクトラも、それに答えるように青白い光を発した。

「今夜はここに泊まっていかないかい?もう夕方だし、これから暗くなるから危険だからね。ここには宿泊施設も整っているし、夜ご飯は温かいものを用意できるよ。」

鈴木教授は、エレクトラの泳いでいる水槽に目を向ける。

「それに、もうちょっとエレクトラくんのことを知りたいんだ。どうだろう?」

陸は頷いた。

「ありがとうございます。外で野宿することを考えれば、本当にありがたいことです。よろしくお願いします。」

晩御飯はカレーだった。鈴木教授のこだわりのスパイスを使ったカレーでとても美味しかった。

咲良はお腹がいっぱいになると眠たくなって、ベッドに横になると、すぐに眠りに落ちた。

鈴木教授は、エレクトラの水槽から離れない。今夜は徹夜で観察するそうだ。

咲良は夢を見た。

宇宙から侵略してくる大怪獣を、エレクトラが、バッサバッサとなぎ倒して地球を守る夢を。

咲良はその後ろで旗を振って一生懸命応援しているのだった...。